心の凝固剤

May 17, 2024

 私たちが紹介している瞑想は、『心を観る』訓練です。マインドフルネスで心を落ち着け、アウェアネスで心の質に気づいていきます。練習を続けると、湧いてくる思考や感情には実体がなく、常に変化し続けていることがわかります。まるで空に浮かぶ雲のように、どこからやってきて、大きな塊になったかと思うと徐々に変化し、最後はどこかに消えてしまいます。心の動きを落ち着いてよく見てみると、それだけのことです。

 しかし、日常生活ではそう感じません。感情は重たく、不安はべったりと心に張り付いているように感じます。思考や感情は形がはっきりしていて、固定されていて、重たく、まるで実在しているかのようです。

 最初は取るに足らない微細で不明瞭な心の動きが、夏の入道雲のようにあっという間に巨大化します。こうした重たい気持ちは、漠然とした不安だけでなく、「物事はこうあるべきだ」という決めつけや、「こうあってほしい」という期待や願望なども栄養にします。それらが心の反応を大袈裟にし、変化に富んだ心を固めて機能不全に陥らせる凝固剤のように働くのです。

 実際のところ、私たちの不安や心配は思考の一形態に過ぎず、瞬間的な存在です。しかし、不安にかられると、次々に同じような不安が現れます。アナログ時代の映画フィルムのように、それらの不安はすべて一コマ一コマ別の思考で、一つ一つは微妙に異なります。それを「心」という映写機が連続再生させるため、まるで映画館の中で映画に没頭しているかのように、その連続思考群が終わることのないストーリーであるかのように感じます。映画館で手に汗を握るように、現実とは別のものを見て、それが現実だと思い込んでしまうのです。その時、心は硬くなり、呼吸も浅くなり、身体も緊張してしまいます。

 こうした心の凝固や機能の誤認を修正するための最も大切なツールが瞑想です。瞑想の入り口となるマインドフルネス瞑想を練習するだけでも、修正効果を発揮します。マインドフルネス瞑想は、固定した重たい思考や感情に囚われていることに気づいたら、それらに「思考」とラベルをつけ、ただ呼吸に戻るというシンプルな作業を繰り返す瞑想です。この単純作業を繰り返すうちに、ラベルを貼った思考がすぐに消えることに気づくようになります。マインドフルネスの練習を続けると、思考や感情、知覚には実体がなく、透明な質があるだけであることが、論理的な解釈ではなく体験としてわかります。

 心の質に気づき始めると、思考や感情が重くのしかかり、振り払えないということがなくなります。瞑想が凝固した心を自然に溶解させてしまうからです。レジリアンスという言葉がありますが、これが重たい心からの自然な回復なのです。私たちの伝統ではこれを「心のしなやかさ」と言いますが、瞑想は、囚われて凝り固まった心をしなやかで柔らかい心へと回復させるものなのです。