瞑想の方向
Apr 14, 2025
瞑想という言葉を聞くと、意識がどこか遠くへ飛んでいくようなトランス状態をイメージする人や、心をコントロールして“いい状態”をつくり上げる精神トレーニングと思う人もいるかもしれません。しかし本来の瞑想は、そのどちらでもありません。頭の中で起こるあらゆる思考や感情に気づいていることこそが大切であり、それは言い換えれば「今、この瞬間に、あるがままの自分でいる」ということです。
瞑想の誤解:トランス状態でも、心的体操でもない
瞑想にはさまざまな誤解があります。たとえば、意識を遠くへ飛ばすような恍惚状態になることを「瞑想が深まった証拠」だと勘違いしたり、逆に「心の動きを細かくコントロールする強い集中力を養うこと」を目標としてとらえてしまったりするケースです。しかし、どちらも本当の意味での瞑想とは異なります。瞑想は、自分の中にある複雑な思考や、イライラや不安といった感情に気づき、どう向き合うかを学ぶ行為です。何も起こらない無の状態を目指すわけではなく、また「すごい超常体験」を得ることでもありません。むしろ「自分が今まさに何を感じ、どう考えているのか」を知ることこそが瞑想の入り口となります。
「あるがまま」を見つめるとはどういうこと?
瞑想を実際にやってみると、座っているだけでも数えきれないほどの思考や感情がわいてきます。鳥の鳴き声を聞いて想像が膨らんだり、前に行った山の景色を思い出してさらに別の考えごとに移ってしまったりすることは、ごく普通のことです。ここで大切なのは、こうした考えや感情を無理に押さえつけたり、「消そう」とがんばったりしないことです。「あ、今こんな考えが浮かんできたな」「こういうイライラを感じているな」と、そっと触れるだけで、自然とその思考や感情は消えていきます。この「あるがまま」を見つめる姿勢こそが瞑想の基本です。
瞑想が目指すもの:クリアに「今」にいる練習
瞑想の代表的な方法には、呼吸に意識を向けるシャマタや、起こってくる現象を観察するヴィパシャナなどがあります。広い意味ではマインドフルネスも同じ流れの中にあると言えます。どの手法でも共通しているのは、雑念をなくそうとするのではなく、自分が「いま何を感じ、どう考え、どう反応しているか」をはっきりと見ていくことです。呼吸に意識を向けているとき、いろいろな思いや感覚が浮かんでくるはずです。そのとき「今こういうことを考えている」と気づいたら、そのまま一度味わい、また自然に呼吸へ戻ります。これを繰り返すうちに、少しずつ頭がクリアになっていく感覚が生まれ、自分がどんな思考パターンを持っているのかにも気づきやすくなります。
トランス状態に陥らないために
瞑想中には、一時的にうっとりするような感覚や高揚感を得ることがあります。これらはいわば脳の生理的な反応であって、本質的な気づきを得るという瞑想の目的とは方向が違います。そうした恍惚状態を追い求めてしまうと、結果として現実(リアリティ)を見失いやすくなり、瞑想によって得られるはずの「今をあるがままにとらえる力」が育ちにくくなります。トランスや恍惚感が悪いというわけではありませんが、そこをゴールにすると「現実に今何が起こっているか」に気づけなくなってしまう点に注意が必要です。
まずはシンプルに「今」に帰る
初心者の方はまず、背筋を伸ばして座り、呼吸を感じるところから始めてみましょう。特に吐く息を意識し、吐き終わったときにはしばらく休むだけというシンプルな形で構いません。吸うときは頑張って「深く吸おう」とする必要はなく、吐くときだけ「空気が出ていくな」と感じてください。もし頭の中にいろいろな考え事や感情が浮かんできたら、「あ、いまこういう思考があるんだな」とそれに『思考』とラベルを付けて、一度触れたあと、そのまま吐くきに意識を戻します。それだけのことを繰り返すうちに、自分の頭の中が少しすっきりしてくるのを感じられるはずです。
瞑想で育む「透明な視野」と「余裕」
瞑想は、起こっている出来事や感情を押さえつけるのでも分析するのでもなく、「今の自分がどうなっているか」をただ眺める時間です。続けるうちに、自分の思考や感情パターンに徐々に気づきやすくなり、日常生活でもイライラや不安を客観的に見つめ直せるようになります。トランス状態や“すごい感覚”を得ようとするのではなく、「あるがまま」を受けとめ、現実とのつながりを深めていくことで、透明感のある心の視野と、余裕ある落ち着きを育てていくことができるでしょう。
慣れないうちは散漫な思考や感情にすぐ飲み込まれるかもしれませんが、呼吸へ何度でも戻っていくシンプルな練習を繰り返すうちに、少しずつ「今」に留まる感覚がつかめてくると思います。テクニックを完璧にしようとする必要はありません。どうぞ、力を抜いて続けてみてください。あなたの日常に、ちょっとした静けさと心のスペースが生まれますよ!