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正直さ

Apr 20, 2025

 私たちが瞑想に取り組むとき、どうしても「これで合っているのかな」と考え込んでしまいがちです。しかし実際には、瞑想が「正しく」行えているかどうかを気にするよりも、今の自分に素直でいることこそが重要だと言われています。チョギャム・トゥルンパの著書『Ocean of Dharma』には、次のような一節があります。

「もし自分が瞑想の実践を正しく行っているのか、間違っているのか疑問に思っても、それは大した問題ではありません。最も重要なのは、自分自身に対して正直であることです。」


瞑想の本質:自分に正直であること
 この言葉が指し示しているのは、瞑想中に浮かんでくる思考や感情に「こんなことを思うなんてダメなのでは」とジャッジを加えないで、そのまま「私はいまこう考えたり、感じたりしているのだな」と認めることです。どんな思いや感情も、まずはあるがままに見て受け止める。その姿勢があれば、「間違っているかもしれない」という評価へのとらわれは自然とやわらいでいきます。

理想の自分と今の自分のギャップ
 瞑想をしていると、「もっと集中すべきだ」「ネガティブな感情は消したい」と思うことがあります。これは理想の自分を強く思い描くあまり、現実の状態を無視してしまう典型的なパターンです。理想と現実の間に大きな開きがあるほど、「これではいけないのでは」と不安を感じやすくなりますが、瞑想本来の目的は「今の自分と正直に向き合う」ことにあります。イライラしているときや体調がすぐれないときも、「いま自分はこういう状態なのだ」と理解してあげるだけで、余計な心身の負担は少しずつ和らいでいきます。

正直さを育てる瞑想のヒント
 瞑想を始めるときは、まず姿勢や呼吸をシンプルに整えたうえで「今の自分ってどんな感じだろう」と問いかけてみます。もしイライラしているなら「そうか、イライラしているんだな」、ぼんやりしているなら「ぼんやりしているな」と、ただ認めるだけで十分です。そこに良い悪いの判断を挟む必要はありません。本当は落ち着いていないのに、無理やり落ち着こうとして力が入ってしまうような遠回りを避けるためにも、ただ「起こった」「気づいた」と確認するだけでよいのです。実際、思考や感情は刻々と変化するので、わざわざ引き止めなくても自然に流れていきます。

自分を偽らないこと
瞑想中の自分を振り返るとき、「これで大丈夫かな」「もっとこうあるべきかも」と思う場面は必ず出てきます。しかし、それらを大問題と考える必要はありません。大切なのは、今ここで起こっている自分の感覚や心の動きを「偽りなく見る」という態度です。自分への正直さを保ちつつ座り続けていると、自然と落ち着きや明晰さが育ち、理想と現実のギャップがもたらす息苦しさも和らいでいくでしょう。慌ただしい日々でも「自分はこの瞬間、何を感じているのだろう」とふと問いかけてみる。そのときこそ、トゥルンパ・リンポチェの言葉が示す「自分自身に対して正直であること」の意味が、少しずつ実感をともなって深まっていくはずです。

 

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