読むロジョン / スローガン15 (2)

meditation まいにちメディテーション メディテーション ロジョン 瞑想 Apr 12, 2022
読むロジョン / スローガン15 (2)

Slogan 15
Four practices are the best methods.
4つのプラクティスは最善の方法 (2) 


 今回も引き続き、スローガン15『4つのプラクティスは最善の方法である』について紹介してきます。特に4つのプラクティスの2つ目である『悪行を捨てる』について細かくみてみましょう。2つ目のプラクティスは、悪い行いを慎むように意識して生活を送るという事です。シンプルで簡単そうに見えますが、なかなか難しいプラクティスでもあります。

 前回紹介したとおり、このスローガン15で言われる4つのプラクティスの1つ目は「功徳を積む」というものでした。これは要するに、自分の心的なパターンや癖にハマらず、素直に物事に向き合うことがポイントです。一言で言えば、「正気でいなさい!」と言うことです。日々の瞑想の実践で、物事に対する決めつけや、不明瞭さを払拭していくことによって、正気を保てるようになると、自分の行動や言動が徐々にですが、よく自覚できるようになります。毎日の振る舞い気を配れるようになるのでとても良いのですが、厄介なことに今までの人生で行ってきたことに対してもしっかり気を配れるようにもなります。そうなると、過去に起こった振り返るだけでも恥ずかしいことや、長年後悔が続いてることがたくさんあることに気がつきだしてしまいます。ちょっと嫌ですね?

 しかしこれは、瞑想の実践を通して、ある意味私たちの心が洗練してきた証拠です。瞑想を始めたての頃は、瞑想は何か特別な状態になったり、心地よくなったりするものと過度な期待を持ちがちですが、瞑想が身について心が洗練されると、自分の今までの人生の振る舞いを鑑みて、ちょっと凹んだり恥ずかしくなったりするものなのです。これこそが正気に戻ると言えるかもしれません。今まで自分がやらかしてきたことに気がつくことは、同じ間違いを繰り返し行わないようになることの唯一の方法ですので、非常に重要な第一歩です。この一歩がなければ何も始まりません。

 こうした今までに周りに迷惑をかけたり、自分の恥ずかしい行為をチベット語では、ディクパ(dikpa)と言います。ディクパとは直訳すると「罪」とか「悪行」という言葉ですが、意味合いとしては、道徳的な罪というようり、精神的なもので、チョギャム・トゥルンパ・リンポチェは、このディクパを神経症的な罪(neurotic crimes)と表現したりもしました。私たちが問題にするべきは、問題がある行動や言動より、精神的な混乱の背景が重要であり、そこをいかに扱えるかが重要なポイントになるのです。

 この2つ目のプラクティスである『悪行を慎むため』には、4つのステップがあります。まず最初のステップとしては、『自分の神経症に飽きる』ことです。要は、「自分があんなことをしなければよかったとか」、「またやってしまった。。」と気がついたり、ある行為をしているとそもそも気分が悪いと感じることなど、まず最初に自分が何か恥ずかしい気持ちや後悔の気持ちを感じることが最初の一歩になります。そして、そうした恥ずかしや後悔を感じたら、今後同じ行為を『繰り行わないようにする』ことが第二のステップです。自分が今までしてきたことを考えて、どう感じたのかをよく吟味して、二度と同じような悪い行いをしないように慎みます。

 
 慎みを持ち始めたら、第3のステップに進みます。この3つ目の段階は伝統的には『ブッダ・ダルマ・サンガに帰依すること』と言われますが、これは言い方を変えれば、完全に状況に『身を委ねて放棄する』ということです。今までの自分の悪い行い、すなわちディクパ(罪)を全て放棄していくのです。なぜ、そんなことをしなければいけないのかというと、仏教においては、何か悪い行いをしてしまった行動そのものより、その人が罪を感じるような行動を起こす要因の方がずっと重要であると考えるからです。そうした視点から観れば、実際にやってしまっとことに赦しを乞い、たとえそれが許されたとしても、また同じような罪を犯す可能性は依然として消えません。その罪を犯す神経症的な心のパターンがあるかぎりは、何度でも繰り返してしまいます。そのため、重要なのは、神経症的なパターンを完全に放棄することです。これが第3のステップです。

 そして、最後に第4のステップは第3のステップをさらに進め、『委ねる・放棄するプロセスを完了さる』ことです。希望や期待、または不安や恐れといった全てのものに囚われずに、あらゆる物事・状況に対して完全にオープンでいるようになります。あらゆる状況に対して向き合える自信も生まれてきます。

 このように悪い行いを慎むためには、まず自分の今までの悪い行いに嫌悪感を持つところから始め、そのの行為を慎み、状況に身を委ねることで自分の神経症を放棄して、最後の段階で希望や恐れもなくなるようプロセスを踏むんでいくのです。大変そうではありますが、段階を追ってできることから順番に進めれば、そうした悪の行いは自然に慎まれるようになります。少しずつでいいので、悪い心のパターンを減らしてみましょう!