読むロジョン / スローガン4

トンレン瞑想 ロジョン Apr 12, 2022
読むロジョン / スローガン4

Slogan 4
Self-liberate even the antidote.
自己の解放は解毒剤に等しい。


 Slogan 3で心を洞察していくと、心の根源が見つからず、そして、「今」起こっている現象的な経験に心は彩られ、変化し続けいるということに気づきます。自分の考えに「根っこがない」ことを知り始めることは、心と向き合う上である種の解毒剤です。特にこのスローガンでの解毒剤は、「空」を理解することを指しています。

 瞑想をしていると、「空」(Emptiness)の話題に事欠きませんし、日本では馴染みのある言葉でもありますが、瞑想と同様、空についての誤解が多いのが事実です。その誤解の中でもよくあるのが「何も存在しない!」と空を理解することです。空は何もないのではなく、事象の「現れ方」と「存在の仕方」が別であるということです。

 空とは、全てのものは私たちの概念作用によって、単に名前を付けられただけの存在であって、その実体と概念的に付けられた名前との間に差異があるということです。ですから、形があるものの「無い」のではなくて、形のあるものの本質を表していいるにすぎません。
 
 しかし、「空さえわかれば悟れる!」または「空がわかれば心の平安が訪れる!」と、この解毒剤さえ手にはれば、全てが解決すると思い込んで、ひたすらそこに執着してしまう人もいます。空に執着することを伝統的には『シュニヤタ(空)の毒』に晒されると表現したりします。

 空を理解することは、自分の凝り方まった考えや感情、そして習慣的な心のパターンから抜けて、別の視点をもつための「解毒剤」として役立ちます。しかし、この解毒剤にこだわりすぎると、かえって物事の本質を見誤ることがあります。

解毒剤は、万能薬ではないのです。

 このスローガンは、どんな種類の解毒剤も適切とは見なされないということです。何かにしがみつくことは、自分を毒しているのです。