読むロジョン / スローガン23

トンレン瞑想 マインドフルネス ロジョン Jun 01, 2022

Slogan 23
Always abide by the three basic principles
3つの基本原則を常に守る。


 今回のスローガンは、3つの基本的な原則を常に維持していきなさいと言うものです。

3つの基本原則とは、以下のことを指します。

[1] 2つの誓いを守る
[2] 常軌を逸した行動を慎む
[3] 忍耐力を養う

 今回は、それぞれの原則について解説していきます。

 まず最初の『2つの誓いを守る』とは、レフュージ・ヴァウ(Refuge Vow)とボーディサットヴァ・ヴァウ(Bodhisattva Vow)と言う2つの誓いを守ることです。チベタン・ブッディズムは、ヒナヤナ(小乗)、マハヤナ(大乗)、ヴァジラヤナ(金剛乗)といったステップを踏んで学んでいきます。ヒナヤナでマインドフルネスをしっかり身につけ、マハヤナでトンレンやロジョンの実践によって博愛の力、コンパッション身につけて、最後にヴァジラヤナで、マインドフルネスとコンパッションにさらに磨きをかけて、ある意味スーパーマインドフルネスとスーパーコンパッションにしていきます。

 ロジョンの実践には、マインドフルネスの継続的な実践と、トンレンや六波羅蜜といったマハヤナで示される各種の練習の継続的な実践が必要不可欠な要素です。ロジョンの実践にはヒナヤナとマハヤナの中にある守るべきルールをしっかり守る必要があるわけです。レフュージ・ヴァウとは、ヒナヤナの訓練に入る際に、「これからヒナヤナのルールを守ります!」と言う宣誓です。またボーディサットヴァ・ヴァウは、「他者を大切にする生き方をします!」と覚悟を決める誓いを立てることです。ロジョンの正しく実践できるようにこの2つの誓いを守るということです。

 2つ目の『常軌を逸した行動を慎む』は、文字通りです。あまり常識からかけ離れた行動をしないようにしましょうと言うことです。なぜこのような指示があるのかというと、ロジョンを実践を誤解してしまって、常軌を逸した行動をとってしまう人が現れるからです。

  ロジョンの基本的な方向性は、自分よりも周りの人を優先させることです。この方向性に基づく訓練をすると、自己犠牲的な行動になることも少なくありません。この自己犠牲に走ること自体がロジョンやマハヤナを誤解している行動です。自己犠牲的な態度に傾倒することは、多くの場合、無私で無欲な『私』を演出する自己顕示の一形態なりがちです。「良い人」になるという考えは単に自分の概念に過ぎないのです。

 こうしたことを誤解すると、『マハヤナを実践する私は周りの人のために何をされてもいいから、こうして道路に寝て、みんなに踏んでもらいます』とか、『私は食べずにみんなに食べものを提供することがマハヤナの実践だから長期の断食をする』などの常軌を逸したた行動に走ってしまう人も少なくありません。しかしこれは単に自己顕示に過ぎず、本当の意味での他者のための行動ではないのです。2つ目の原則はそうした罠に嵌らないように、行動を慎み謙虚でいなさいと言っているのです。

 3つ目の『忍耐力を養う』は、文字通り忍耐を持つことです。このスローガンで注意すべき点は、私たちは時に忍耐を使い分けていることがあるということです。身内には忍耐が効くが、敵対してる人や、あまり関係のない人には忍耐が効かないということはよくあることです。しかしこうした忍耐の極端な選別は、自分自身を「崇拝」することの表れであり、良いことではありません。こうしたこともにも注意しなさいというのが3つ目のポイントです。 

 ロジョンを実践したり、トンレンを実践したり毎日心の訓練をしていくと、私たちはどうしても調子に乗ってしまう可能性があります。『人のために良いことをしている私は、ちょっと周りの人たちより優れている』といったような錯覚を起こしたり、ある種のヒロイズムに傾倒したりしてしまう可能性があります。私たちがロジョンを実践する場合、こうしたことに細心の注意を払う必要があるのです。物事を素直に、ありのままに洞察する力であるプラジュナをしっかり養い、常に自分がどうなっているのかに気を配り、心の傾斜に気がつくようしなければなりません。そのためにも毎日の瞑想が欠かせないのです。