読むロジョン / スローガン13

トンレン瞑想 ロジョン Apr 12, 2022
読むロジョン / スローガン13

Slogan 13
Be grateful to everyone.
あらゆる人に感謝する


 今回のスローガンは、前回のスローガン12『あらゆる責めを一つに追い込め』から続くもので、引き続き人間関係を活用しながら、自分の中にある思いやり・優しさを培う相対的なボーディチッタのトレーニングです。

 実際にスローガン12を実践して、日々の生活の中で「あらゆる責めを一つに追い込もう」とすると、自分が責めを負うには、自分を責める人がいなければできないことに気が付きます。日常の出来事、周りと人たちのつながり、世界との関係があってはじめて、私たちは心を洞察したり、鍛えたりできます。周りの人たちとの関わりがなければ、私たちは自分のエゴ(自我)を超えたものの見方を培うことができないのです。

 周りの人たちが私たちに問題や課題、混乱を持ち込んできてくれることで、私たちは心と向き合うトレーニングが続けられるので、私たちはそれに感謝するべきだと言うのがこのスローガン13『あらゆる人に感謝しなさい』なのです。

 仕事でのトラブル、家庭でのトラブル、友人とのトラブル、、私たちの毎日には何かしらの問題があります。マインドフルネス・メディテーションを通じて明晰さと洞察力を持って暮らせば、今まで気が付かなかったトラブルや、ちょっとした不具合がたくさんあることがさらにわかります。

 そして、もし誰かがあなたに問題を持ち込んだとき、それを感謝しながら取り込めることができれば、問題を抱えていた相手の心の混乱や苛つきは、私たちに引き継がれ、その人の苦しい状態を解放してあげることができます。これはスローガン7で紹介したトンレン・プラクティスと全く同じ原理です。

 ちょっとそんなのは嫌だな。。と思う方もいるかもしれません。周りの人のネガティブなものなどは貰いたくも、触りたくもないでしょう。しかし、誰かがイライラから解放された感覚や落ち着きや、リラックスをその場に提供できなければ、私たちが住んでいる世界は、イライラや攻撃的な気持ち、自分だけが良ければそれで良いという自己中心的な気持ちで飽和されてしまいます。誰かがそうした世界の汚れた重たいものを、正常に戻さなければなりません。

 マインドフルネスやアウェネス(ヴィパッサナ)のメディテーションの実践を続け、自分の身の回りの世界で起こっていることを明晰に見て、トンレンやメッタで鍛えた思いやりを持って向き合えば、私たちは自然に、こうした世界のネガティブなある種の汚れは取ってしまえばいいと考えるようになります。これがメディテーションを実践して、心と向き合った結果として顕れる心の動きです。自分の人生をよく観て、まともに過ごして、誰も傷つけないように生きていくためには、必然的にそうなるのです。

 また、毎日の心の動きを見ていくことで、日々起こる心の混乱の多くは、周りの人たちに起因していこともわかり始めます。周りの人たちが持ち込む混乱は、自分の人生の大きな障害のように思い、目を背けたり、怒りと共に排除したりしたくなります。しかしそうした時こそ、その瞬間の自分のフィーリング、体の強張りやリラックスなどの反応などをよく洞察することで、私たちの心のトレーニングを起こっているのです。

 メディテーションは、ただぼーっとして何も考えないようにしたり、何かに過度に集中する力を強めてたりしても、日常で起こる心の動きを見る力は培えません。外のノイズがあってはじめてメディテーションの練習になりますし、体の痛みや痺れ、痒みがあって初めて練習になるのです。日常にあるイライラ、不安、問題はとても重要です。これがなければ私たちは心を育むことがでないのです。