世界は広く、助けを必要としている存在が無数にいます。だからこそ、自己の安定だけでは足りません。 自分を耕す訓練に加え、他者へ開き、行動を通じて応えることが必要です。

マハヤナは、自己修養と他者への奉仕を両輪とし、世界と関わりながら智慧と慈悲を培う道です。 その実践は、自分と世界を切り離さずに歩む生き方へとつながります。

マハヤナの核心は、菩提心（目覚めの心）を軸に、智慧（般若）とコンパッション（慈悲）を切り離さないことです。 慈（マイトリ）・悲（カルーナ）・方便（ウパーヤ）の実践を通じて、自己の枠を超え、他者と共に歩む姿勢を育てます。

この巻では、仏性（覚醒の遺伝子・基本的な善）の理解から始まり、誓願を立て、空と無我を観想し、六波羅蜜やロジョンを実践し、菩薩の旅路を歩む全体像が示されます。 それは、智慧と慈悲を不可分として体得し、菩薩として世界に関わる生き方を学ぶ道筋です。

ヒナヤナ・マハヤナ・ヴァジラヤナは切り離された別々の道ではなく、ひとつながりの連続した旅路です。 トゥルンパ・リンポチェは「ヒナヤナは生命の力であり、道全体を支える土台」と強調しました。 だからこそ、順を追って学ぶことが、道を全うするために欠かせません。

また、学び方そのものも重要です。学んだことをその場の体験に結びつけ、 読解（Study）と瞑想・省察（Practice）を往復させることが、理解を知識から智慧へと変容させます。 マハヤナを学ぶとは、単なる理論の積み重ねではなく、智慧と慈悲を生きた体験として根づかせる営みなのです。