読むロジョン / スローガン3

トンレン瞑想 ロジョン Apr 08, 2022
読むロジョン / スローガン3

Slogan 3
Examine the nature of unborn awareness.
生まれていない意識の本質を吟味する


 前回のスローガン、『すべてのダルマを夢とみなす』は、心を軽く、柔らかくする効果があるものの、捉え方を間違ってしまうと、変な誤解したり空想を膨らませてしまう可能性もある諸刃の剣のようなスローガンでもあるため、今回のスローガンが重要な役割を果たしてくれます。

 このスローガンでは「生まれていない意識の本質」を熟考していきます。思考のプロセスやパターンをよく観て、自分自身の心をよく観ていく作業しなさいと言うことです。また、「熟考」というのは、物事を分析したり評価したりするのではなく、シンプルにありのままに心の動きを観ていくことを指します。加工せずに素直に心を観ることがこのスローガンの大切なポイントの一つです。

 そして心を素直にみるためには、マインドフルネスの力が必要不可欠になります。
 マインドフルに自分の思考や感情と言った心の動きを明晰に見ていくと、私たちの心は、なにもないことがわかり始めていきます。

 なぜ周りのものが見えているのか?
 なぜ外の音が聞こえているのか?
 なぜ風の冷たさを感じるのか?
 なぜコーヒーの香りがわかるのか?
 なぜ怒りが湧いてきたのか?

 こうした感覚や感情、心の反応ををマインドフルに観て調べていくと、その先にあるのは、ある種の空白であり、さらにその先は全て溶けて消えてしまいます。何も無くなってしまうのです。まるでマインドフルネス・メディテーション中に吐く息を観察していくと、呼吸が大気に溶けてなくなるような感覚に似ています。
 
 マインドフルに心を観てみると、心は常に揺れ動いていて、オンオフを繰り返している電球のように現われては消えています。心は色も形もなく、基本的には何もないものなのです。つまり私たちの心は生まれていないのです。マインドフルネスの練習を積めば積むほど、自分の心はどこから始まったのかわからないことに気がついていきます。

 心が生まれていないというと不安になるかと思いますが、心配しなくて大丈夫です。心は生まれはしていないものの、私たちは常に何かさまざまな物事を認識して洞察しています。

 こうした洞察は、生まれていない洞察で、感情や記憶や先入観の混ざっていない純粋な意識です。これは誰に創られるわけでもなく、私たちはこのような洞察、または意識を持っています。マインドフルネスやメディテーションを始めて間もない方はまだ見えないかもしれませんが、練習を続けて行けばしっかりと見える様になっていきますので、安心してください。みなさんは空っぽな抜け殻のようなものではありません。

 安心したところで、このスローガンのポイントに戻りますが、スローガンで熟考したいポイントは、この揺れ動いていて、ついたり消えたりする心を誰が観ているのか?ということです。一体誰が「ダルマを夢」として認識しているのでしょうか?
 
 ここは大切な熟考ポイントです。

 この「生まれていない意識または洞察」の本質を理解していくことは、「アラヤの自然な徳」を発見するといわれ、ボーディ・チッタにたどり着くゲートウェーになり得るものだと言われます。しっかりマインドフルの練習を続けて、心を素直に観る癖をつけていきながら、この問いに向き合ってみましょう!

 今回のスローガンは、なにかモヤッとわからないという方も少なくないと思いますが、まだわからないことがあっても大丈夫です!

 私はいつもクラスでみなさんにお話ししていますが、ロジョンは実践者自身がしっかり「感じる」ことが大切な練習です。単に理解してればいいというものではありません。わからなかったり、不安があってもOKです。そういうものも含めて全部感じてみてください。当面は完璧な理解より、今の不完全さを感じることを優先しましょう。

 マインドフルにスローガンに向き合えると、スローガンが少しずつ自分の一部になってくると思います。そういった意味でもスローガンの理解にはマインドフルネスの実践がとても大切です。しっかり座ってしっかり熟考する癖を今からつけていましょう!