海外瞑想レポート(2)壁のない美術館と、公園に座る人たち

マインドフルネス メディテーション 海外瞑想レポート 瞑想 Oct 31, 2026

11年間で、100万人を超える人が、その小さな部屋を訪れました。マンハッタン17丁目にあったルービン美術館(Rubin Museum of Himalayan Art)の「チベット仏教の祠堂(シュライン・ルーム)」です。灯りの中に仏画や仏像、楽器、供物が並び、僧侶の読経が低く流れている。同館の公式サイトは、2013年から2024年までの来場者を100万人以上と記しています。

その美術館は、2024年10月に建物を閉じました。しかし、瞑想は終わりませんでした。この秋、ニューヨークで瞑想が行われている場所をたどると、高架の公園や、ブルックリンの美術館の一角、そしてセントラルパークに行き着きます。海外瞑想レポートの2回目は、瞑想が建物を出て、街のどこに座っているのかを、現地の公式情報と報道をもとに見ていきます。

壁のない美術館

ルービン美術館は、ヒマラヤの美術を専門にする美術館として2004年に開き、20年間チェルシーにありました。2024年2月、同館は建物を手放すと発表し、タイムアウト・ニューヨークはこれを、場所を持たない「分散型のモデル」への転換と報じました。仏教誌トライシクル(Tricycle)によれば、館長のヨリット・ブリッチギ(Jorrit Britschgi)は「国境のない美術館」と表現し、建物にかけていた費用を、コレクションと展覧会とプログラムに回すと説明しています。建物は2024年10月6日に閉まりました。

注目したいのは、瞑想のプログラムが続いていることです。同館が2015年に始めた「マインドフルネス・メディテーション」は、所蔵する美術品を一つ取り上げ、瞑想の教師が短い話をして、20分の瞑想をするという、週1回の会でした。2026年1月の同館の発表によれば、ポッドキャストとして配信されたエピソードは500本を超えています。

対面の会は、場所を移しました。現在は毎週木曜日の午後1時から1時45分まで、マンハッタン29丁目のニューヨーク・インサイト・メディテーション・センター(New York Insight Meditation Center)で開かれています。主催と企画はルービン美術館のまま、会場だけが瞑想センターになったのです。進行役は、同館のタシ・チュードゥン(Tashi Chödrön)です。美術館が壁を手放したとき、瞑想の会は瞑想の家に引っ越したのです。

高架の公園で

もう一つの会場は、空の下です。ハイライン(The High Line)は、マンハッタン西側の高架鉄道の跡を公園にした、観光客の多い場所です。その30丁目と10番街の角で、2026年5月から10月まで、月に1回、「講義と瞑想」の会が開かれました。ルービン美術館とハイラインの共催で、参加は無料です。

きっかけは、ハイラインの野外彫刻のプログラムに置かれた、ベトナムの作家トゥアン・アンドリュー・グエン(Tuan Andrew Nguyen)の作品「宇宙を貫いて輝く光(The Light That Shines Through the Universe)」です。この作品にちなみ、仏教における「光」をテーマに、前半は研究者や作家が講義をし、後半は招かれた瞑想指導者がガイド瞑想をする、1時間の会でした。公式ページには「仏教のムドラ(印)」「シルクロードの仏教」「光の本性」といった題が並び、5月から9月までの回は事前登録が満員になったと記されています。最終回は10月10日でした。

観光客が行き交う高架の上で、静かに座る。会場としては落ち着かないはずです。しかし、だからこそ、街の中で座る練習になっているのだと思います。

ブルックリンの祠堂と、セントラルパーク

冒頭の祠堂は、2025年6月11日から、ブルックリン美術館(Brooklyn Museum)2階のアジア美術のギャラリーに移されました。ルービン美術館との6年間の提携で、2031年4月まで公開されます。100点を超える美術品と祭具が、一軒の家の祠堂のように配置され、僧侶と尼僧の読経が流れています。公共ラジオ番組ザ・ワールド(The World)の2025年6月の記事によれば、室内には8つの腰掛けがあり、来館者はそこに座って、眺めるか、瞑想するか、祈ることができます。

公園にも、座る人がいます。ニューヨーク・インサイトは2026年7月26日、セントラルパークの北側で「サマー・サンデー・サンガ」を開きました。屋外で一緒に瞑想し、そのあと持ち寄りのピクニックをする会です。7月24日には、セントラルパークの野外音楽堂で、ブラフマ・クマリス(Brahma Kumaris)のニューヨーク支部が、正午から午後6時まで無料の「瞑想マラソン」を開いています。

そして10月10日、ニューヨーク・インサイトは「マンハッタン巡礼」を行いました。マンハッタン北端のメット・クロイスターズに朝9時半に集まり、ハドソン川を見下ろす場所で瞑想をしてから、昼食をはさんで約12マイル(19キロ)を沈黙のまま歩き、夕方に29丁目のセンターに着く一日です。瞑想の経験は問わない、雨でも決行、と公式ページにあります。

私たちの伝統から見ると

ニューヨークの瞑想は、専用の建物を手放し、公園や美術館の一角や街路へ出ていきました。日本ではまだ、瞑想は静かな部屋でするもの、という前提が強いように思います。美術館で座る。公園で大勢で座る。街を黙って歩く。そういう催しは、まだ少ないのです。

私たちの伝統、つまりチョギャム・トゥルンパ・リンポチェが欧米に伝えたシャマタ・ヴィパッシャナの練習から見ると、この動きは不思議ではありません。トゥルンパ・リンポチェは、瞑想の場の見た目と空間に、とてもこだわった人でした。先日このブログに書いたように、彼が作った祠堂の壇は、水を満たした7つの器と、真ん中の水晶の球だけの簡素なものでした。瞑想を支えるのは、たくさんの品物ではなく、『空間』なのです。灯りに照らされたブルックリンの一室で8つの腰掛けに座る人たちは、その空間を使っているのだと思います。

もう一つは、歩くことです。私たちの伝統では、座る瞑想のあいだに歩く瞑想をはさみますし、クッションを降りたあとの時間を「ポストメディテーション」と呼んで、同じくらい大切にします。マンハッタンを19キロ、黙って歩く。それはマインドフルネスを街へ持ち出し、アウェアネスを街の騒音にまで開く練習です。瞑想に必要なのは壁ではなく、座る人と空間なのです。

公園や美術館でいきなり座るのは、少し勇気がいります。まずは座り方の基本を身につけてから、場所を変えてみてください。瞑想で磨くべき新鮮さや好奇心など、新しい気づきがあるかもしれませんよ。

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