読むロジョン / スローガン15 (3)

トンレン瞑想 ロジョン Apr 12, 2022
読むロジョン / スローガン15 (3)

Slogan 15
Four practices are the best methods.
4つのプラクティスは最善の方法 (3)  / ドン(Döns)を供養する


 今回も引き続き、スローガン15『4つのプラクティスは最善の方法である』の4つプラクティスについて紹介してきます。3つ目のプラクティスは「ドン(Döns)を供養する」というものです。ドン(Döns)とは、チベット語で病気、不幸、あるいはそのようなものを作り出す幽霊たちのことを言います。また、トルマとは、「お供えのお菓子」のことです。チベットの儀式を見たことがある人は、バターや生地などの小さなお供え物を目にしたことがあるかもしれません。それらがトルマと呼ばれるものです。

 このプラクティスの直接的な意味としては、そうしたお化けたちに「御供物をしましょう!」となります。なぜ不幸や厄災をもたらすお化けにお供えをしなければいかないのか?と疑問に思うかもしれませが、このドンをある種の「心的な発作」として捉えてみるとこのプラクティスの意味がよくわかるようになります。

 ドンは全く予期せぬタイミングで私たちに奇襲をかけ、突然私たちの気分を変えてしまいます。何もしていないのに突然不機嫌になった経験があると思いますが、これもドンに襲われて取り憑かれた時です。急にイライラしたり、怒りが湧いたり、意地悪になったりします。特段の理由もないのに、感情の乱高下が起こってしまいます。このような心的な発作は所構わず、時間も問わず突然発生します。

 また、日常の中で注意散漫だったりすると、すぐこのドンに取り憑かれてしまいます。例えば、ちょっとした買い物だからと、寒空の中コートも着ずに出かけたら、風邪をひいてしまったとか、家の中だと油断していたら、つまづいて転んで怪我をするとか、自分の気が緩みすぎ、心が散漫な時に思わぬ出来事が起こりますね。こうしたこともドンに襲われいると考えます。私たちの不注意が心理的に影響を与えて、突然の心的発作や実際の事件を起しているのです。要するに日常でマインドフルでいる感覚を失うと、私たちはいとも簡単にドンに襲われるのです。

 私たちが常にマインドフルネスであれば、ドンに取り憑かれることは避けらるのですが、なかなか1日中マインドフルネスでいることは簡単ではありません。気が付くと注意散漫であったり、ぼーっとしたりして、マインドレスなのが私たちの日常です。いくらでもドンに付け入る隙を与えてしまっているのです。毎日襲われているといってもいいかもしれません。

 ドンから逃れるのは容易ではなさそうですが、視点を変えてみれば、自分がドンに取り憑かれたことに気が付くということは、自分がマインドレスに陥っていたことに気が付くこととも言えるわけです。ここにこのプラクティスのポイントがあります。

 ドンに襲われることは、自分がいかにマインドフルな感覚を失っていたかを気が付く大切な契機であり、同時にマインドフルな自分に戻ることができるきっかけになります。ドンを避けたり無くしたりするよりは、ドンをしっかり認めて、ドンに取り憑かれたことを感謝する方が私たちの心のトレーニングには有効なのです。

 そうした観点からは、ドンに取り憑かれたら、彼らに「マインドフルネスを気づかせてくれてありがとう!」とお礼をするべきなのです。また、ドンに日頃からお供えをすることは、マインドフルネスに戻れることの大切さを毎日忘れないようにすることでもあるのです。これがこの3つ目のプラクティス、ドンを供養するという意味です。皆さんもぜひ毎日の生活を振り返ってみてください。マインドフルでしょうか?それともドンに取り憑かれているでしょうか?